唐梨の木
Since 2006.12.12
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先日の「考え中。」の記事に拍手を2回もらったので、おkと取りましてうpすることにしました(^_^)
どちらかといえば、七宝メイン?の犬かごです。
これは、そんなに犬かごの子ども気にしなくてもいいようなもの(というか生まれてすらいません)なので、苦手な方でも大丈夫かな?
ではつづきを見るからどうぞ(。っ・ω・)っ
どちらかといえば、七宝メイン?の犬かごです。
これは、そんなに犬かごの子ども気にしなくてもいいようなもの(というか生まれてすらいません)なので、苦手な方でも大丈夫かな?
ではつづきを見るからどうぞ(。っ・ω・)っ
宝物
「七宝ちゃん、変化が上手くなったわね」
長い旅のつかの間の休息のひととき、珊瑚と連れ立ってどこかの草原に足を伸ばして座っていたときだ。七宝の変化した姿を見てかごめが言った。
七宝はその時、なんの経緯だったか栗毛の子馬に化けていた。それでも本人は立派な駿馬に化けたつもりなのだろうが、端から見ればころころとした、かごめの腰ばかりの大きさの子馬にしか見えない。しかし人間以外の動物に化けるのが苦手な七宝の変化は、出会ったころのものと比べて、何に化けたか分かるくらいには上達していた。
誉められた七宝は変化を解くと、嬉しそうに尻尾を膨らませながら胸を張った。
「そうじゃろ?毎日修練を欠かさずにしておるからな!いつかおっとうのように、上手く変化できるようになりたいんじゃ」
誇らしげに語る七宝の父親は黄泉路を通って久しい。この小さな妖狐もまた、四魂の玉の因果により、大切な家族を失っていた。
普段仲間と共に旅をしている時は気付かなかったが、七宝の口から父親の名が登ったのは久しぶりだった。
かごめはそんな七宝の黄金色の頭を撫でてやった。その様子を見ていた珊瑚が、隣で膝に乗せた雲母を撫でながら口を開いた。
「へえ、七宝の親父さんはそんなに化けるのが上手かったの?」
「ああ。人里に下りてもばれたことは一度もないと言っておった」
狐は警戒心の強い生き物だが、同時に好奇心も大きく何にでも興味を持つ。七宝の父もまた、好奇心旺盛で、人間観察がうまかったのだろう。
「それじゃあ、たくさん練習しないとね」
「もちろんじゃ!」
鷹揚とうなずいた七宝は、あたりを見回すとかごめと珊瑚に近付くよう手招きをした。
「それとな・・・」
やや声を落として内緒話をするときのように、口元に手を当てた七宝はこっそりと、かごめと珊瑚に言った。
犬夜叉のように強くなりたい。
弥勒のように賢くなりたい。
これはあの2人には内緒じゃぞ、と人差し指を口元に添えて「しー」の形を取った。
普段言いたい放題言っている仲間を、父と同じくらい尊敬していることが照れくさいのか、悪戯っぽそうに笑っていた。
☆ ☆ ☆
里にも下りてきた春の息吹きを感じながら、かごめは薬草摘みの合間、ふと思い出した遣り取りを隣に座した犬夜叉に話した。
七宝には内緒だと言われていたが、もう3年以上前のことだ。思い出話としてしゃべっても良いだろう。
その話を聞いた犬夜叉は、一瞬呆けた顔をすると、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。その頬に僅かに朱が差していたのをかごめは見逃さない。
「ったく、普段あれだけ言いたい放題言ってやがったくせによ・・・」
かごめに一瞥をくれると、犬夜叉は不機嫌そうに宙を睨みつけながら言った。
それが犬夜叉の照れ隠しだとわかっているかごめは、くすりと笑みを零した。
「なんだかんだで、七宝ちゃんは犬夜叉のこと尊敬していたのよ」
この戦乱の世で、いくら純粋な妖怪とはいえ親を失った七宝は、あのままでは生き抜くことはできなかっただろう。しかも、父親の敵を取ろうと、四魂の欠片を使い乱暴狼藉を繰り返していた雷獣兄弟に挑もうとしていたのだ。もしも、あの時七宝が目を付けた四魂の欠片の持ち主が、かごめと犬夜叉でなかったらと思うと・・・。
結果的に七宝の父親の敵を討ったかごめと犬夜叉に、七宝はそのまま付いてきた。本人は優しくしてくれるかごめに付いてきたのであって、犬夜叉とは最初は喧嘩相手だった。それでも旅を続け、仲間が増えるに従って、七宝も成長していった。
大切なものを命を賭けて守るというのは、犬夜叉や弥勒から学んだことではないだろうか。だから七宝は強くなりたいと願い、修行の旅をするようになったのだろう。
「七宝ちゃんにとって私たちは、家族同然だったのよ」
1人父親を亡くしてからかごめたちに会うまでの間、どれだけ寂しく悲しかっただろう。ひとりぼっちになった絶望感は計り知れない。
「今でも、そうだろうが」
そう言った犬夜叉の目の奥に、優しい光を見つけかごめは微笑んだ。
「うん、もちろんそのつもり。いつでも、帰って来れる場所であるようにしてあげなきゃ」
それは弥勒と珊瑚も一緒だろう。ただあそこは今、小さな怪獣たちがいるせいで、帰って来てもゆっくりはできないだろうが。
「だけど、こっちも騒がしくなっちゃうわね」
そう言ってかごめは、そっと自分の腹に手を添える。緋袴の上からもはっきりと分かるほどかごめの腹部は膨らんでいる。かごめの手をその上から大きな掌が包んだ。
「お、蹴った」
重ねた手の上からでも分かるほど、強く内側から蹴ったのが伝わった。
「ふふ、犬夜叉が触ったのがわかったのかな?」
「分かるわけねえだろ。見えねえんだからよ」
「でも、声は聞こえてるかもよ?」
春の陽気に包まれて、自然と笑みがこぼれてくる。隣の犬夜叉も僅かに目尻を下げて、琥珀色の目に暖かな光を湛えている。
「七宝ちゃんみたいな子だといいわね」
「やめろ。あんな生意気なガキ」
「え~、七宝ちゃんいい子じゃない」
「かごめに似てればそれでいい」
「なにそれ~」
温かな手を重ねて、大事に大事に守りたい、掛け替えのない宝物がここにはたくさんある。