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唐梨の木

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一年以上前にかいたものです。学校の帰りにてをつないでいるカップルを見て思いついた物。

設定は不明です。現代犬かごのような、そうじゃないような・・・

拍手[8回]

 

 

息が白い
風が冷たい
だけど、あなたの隣はとても、
暖かい・・・
 
+*+☆*+*☆+*+☆*+*☆+*+


「はぁ~」
冷たくなった手のひらの中に息を吹き込む。
一瞬だけ、暖かく感じた。 

「何?お前、手袋してねえの?」
そんな私を見て、右隣からあきれたように言われた。
         
一応、私の彼氏。
顔はそんなに悪くないのに、この目付きと口の悪さで
結構、損をしていると思う(でも、私は好き)
実は子供っぽいんだな、これが。

やきもち焼きで、わがままで、意地っ張りで、
だけど寂しがりだったり(私にだけかな?だといいな)
 「今日、手袋忘れちゃって・・・」
失敗したと言いながら笑ってみせる。
見れば、寒さのせいで冷たい癖に赤い。
そんな私の手を見て、彼は呆れたように笑う。
「しょうがねえ、おれの片方貸してやる。」
そう言うと左の手袋をはずして、私に差し出した。
「えー?片方だけ?」
「けち~」と言いながらも、素直に受け取る。
 
彼の時々見せる優しさを抗うことはしない。
だって、貴重なんだもの。
 
私のより、シンプルなデザイン。
はめるとひと回りほど大きかった。
あぁ、男の子なんだなと、こんなことで思う。

さっきまで、はめていたせいで暖かい。
 
「してない方はこうすりゃ、あったかいだろ。」
と、私の右手が大きな手のひらに握られた。

「え、」と顔を見れば、耳まで赤い君の顔。
決して、寒さのせいだけではないだろう。
 
普段はこんなことしないくせに。

人通りの少ない所だからだろうか。
私もきっと顔、赤いだろうな。
 
 
さっきまでのおしゃべりは無くなってしまったけど、
私たちはいつもより、少しだけ近くにいた。
 
私の手の冷たさが、彼の手の暖かさが、
混ざり合って、心地いい。
 
 
 
「また、手袋忘れようかな。」
「ばーか。今回だけだ。」
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