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唐梨の木

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禁付きじゃないけど、ちょっと注意。

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溢れるほど

 
 
「ん・・・っ」
 腕を首に回して、そのまま唇を重ねた。ふわりととろけそうな感触に、嬉しくなってチュッと音を立てて一度離れる。今度は角度を変え、口付けるとその甘い唇を啄む。
 しかし、いくら角度を変えても、その口は閉じられたまま。焦れったくなって、舌でそっと唇をなぞった。
 すると、両肩を掴まれ引き離される。
 名残惜しそうに唇を見つめ、迷うように揺れる琥珀色の目を見た。
「口、開けてよ・・・」
 思うようにいかないことに、むくれて言うと、僅かに両手の力が緩んだ。その隙にまた首に腕を絡め、唇を押し付ける。
 一瞬彼の肩が跳ねたようだが、気にせず唇を重ね続けた。
「はっ・・・」
 息継ぎのために、唇を離した瞬間、彼が左手を腰に、右手を後頭部に回して口付けてきた。
 貪るように角度を変え、隙間から彼の舌が侵入してくる。それを自分のものと絡め、吸う。お互いの舌を絡め、吸い付き口内を行き来する。
 嬉しさと酸欠でクラクラしてきたところで、漸く離れた。つうと2人の間に銀糸が繋がり、ふつりと切れる。
「は・・・っ」
「はぁ、はぁ・・・」
 肩で息をしながら、つやりと熱を持った琥珀色を見つめる。
 その瞳が近づき、唇が触れるか触れないかのところで止まった。
「もう、どうなっても知らねーからな」
 そう言うと、再び唇が重なり、裾から手が入ってきた。




 ☆ ☆ ☆




「マジで、信じらんねえ」
 深々と犬夜叉は溜め息を吐き、眠るかごめに視線を落とす。近くには、空になった酒瓶と杯が転がっていた。
 酒に酔ったかごめに煽られて、押し倒した途端、かごめの体から力が抜けた。突然意識を失ったかごめに、一瞬心の臓が凍りついたが、眠っただけだと確認すると一気に怒りとも安堵とも言えない気分に襲われた。
 高まった体の熱をどうしてくれると、かごめを睨むが、本人は夢の中だ。火鼠の衣を体に巻き込み、うっすらと開いた口から、酒気を帯びた寝息が聞こえる。
 再び、深く溜め息を吐き、そっとかごめに手を伸ばす。艶やかな黒髪を一房手に取ると、さらさらと手から零れた。その感触が気持ち良くて、何度も髪を梳く。
 くすぐったそうにかごめが身を捩り、するりと手から髪が離れた。
 かごめの寝顔が穏やかなままなのを確認すると、犬夜叉は隣に身を横たえた。静かにかごめの頭を自分の右腕に乗せ、左腕でかごめを抱き寄せる。

 今回はこれで良かったのかも知れない。あのまま進めていたら、箍が外れた自分は何をしていたか分からない。
 それでも、酔っていたとはいえ、かごめの方から求めて来てくれたのは正直嬉しかった。いつも一方的に求めている気がしていたから、かごめも同じ気持ちだったと、そう思えてほっとした。

 幸せそうに眠るかごめの髪を弄びながら、溢れる愛しさにずっと寝顔を見つめていた。

 
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