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唐梨の木

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バレンタインデーとは元々、聖バレンティヌスが恋人たちのために殉教した日であり、それがローマの異教のお祭りと結びついたのが始まりだ。海外では、男女関係なく大切な人にバレンタインカードをあげたり、花を贈ったりするのが主流である。
「バレンタインにチョコレートを」というのは日本の製菓会社が始めた戦略であり、本来の主旨とは違っている。

(だから、わざわざバレンタインの意味も知らないやつに、製菓会社の思惑に乗ってまで、バレンタインのチョコを贈る理由も必要も無いのよ)

冷蔵庫からラップをかけたバットを取り出す。

そもそもかごめはそんなことに現を抜かしていられる身ではない。常に命と受験の危機に曝される多忙な生活を送る中学生なのだ。

バットに並べられたチョコレートを手で丸め、ココアパウダーを振るったお皿の上で転がす。

(第一、犬夜叉はこんなこと興味無いだろうし、本命チョコの意味だって……)

そこまで考えて、チョコレートを丸めていた手を止める。
本命とは、つまり自分の一番好きを、チョコという形に込めて相手にあげるということだ。
かごめの一番はもちろん犬夜叉だ。だけど、犬夜叉の一番は……

ぐにゃ、という感触を手の中に感じて、慌てて手を開く。見れば手の温度でチョコレートが溶けかかっていた。べたべたと手に張り付くようになってしまったチョコを見て、かごめは嘆息する。
こうなってしまったら、もうどうしようもない。無理やり丸めようとすれば、ますます手に付いて小さくなってしまう。現に、他の物よりもすでに一回りほど小さくなっていた。
だが、一度手の中で溶けてしまった物を、もう一度冷やし固めてあげるというのはちょっと気が引ける。
かごめは逡巡した後、溶けて柔らかくなってしまったチョコを口に入れた。
口の中にチョコレートの甘さが広がる。

(うん、甘い)

チョコの意味を教えずにあげてしまってもいい。いつも戦国時代へお土産に持っていくおやつのように。
でもそれじゃ、バレンタインチョコの意味がない。かごめが込めた思いは結局届かないことになってしまう。

自分からバレンタインの意味を教えてまで、チョコをあげたいわけじゃない。それじゃ、まるで自分の気持ちを押し付けるみたいで嫌だ。

溶けかかったチョコレートはかごめの口の中ですぐに形を無くした。
甘いミルクチョコレートのはずなのに、口に残った味はかごめにはほんのり苦く感じた。
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